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For the Bible Tells Me So
2007年にアメリカで公開されたドキュメンタリー映画。

“For the Bible Tells Me So”
for the bible tells me so
「聖書が私にそう教えるから」っていう訳になるでしょうか?

保守的なアメリカの宗教界のリーダー達が、どのように聖書をセクシャル・マイノリティに対する差別と偏見の助長に利用したか、その結果、どんなに沢山の家族が苦しむことになったか、その事実をインタビューを中心に描いたドキュメンタリーです。

冒頭のシーン、「同性愛者の撲滅キャンペーンを始める」って、白人のおばさんがインタビューに答えてると、いきなりパイが彼女の顔に投げつけられます。
anita_bryant

パイを投げつけたのはゲイの活動家。

カメラの前でその彼に向かって、

「我々は彼を許し、彼のために祈る。神よ、どうか彼の魂を救い、彼をその間違った生き方からお救い下さい。」

そう涙を流しながら祈るのは、有名な宗教活動家で、70年代にゲイをターゲットにした法案を成立、またはゲイを守る法案を潰すことに奔走したアニタ・ブライアント。(公開中の映画『ミルク』でも彼女のニュースフィルムが登場しました。)

映画はここから、彼女を始めとする宗教界の保守派のリーダー達が、「同性愛はabomination(大罪)だ。」って、群集やカメラに向かって訴えるシーンを繰り返し映します。

その中で、「ゲイは嫌悪すべき罪である。」という根拠として挙げられているのが、聖書のレビ記20章13節にある以下のフレーズ。

“If a man lies with a man, as he lies with a woman, both of them have committed an abomination: they shall surely be put to death; their blood shall be upon them.”

聖書には色んな英訳があるので、それよって多少変わると思われますが、その大意は、

「もしも男が、女と寝るように男と寝るならば、そのどちらも大罪(abomination)を犯したことになる。彼らは死罪に処せられるべきであり、血でもってその罪を購うべきである。」

これだけ書くと、確かに聖書は同性愛を究極の大罪とみなしているように聞こえます。

でも、このドキュメンタリーでまず論じられているのは、その前後の聖書の記述、または聖書全体に書かれている内容をきちんと読んで判断しなさい、っていうこと。

例えば、上の記述のちょっと前には、

「エビを食べてはならない、それは大罪である。」って書いてあったり、他にも、

「同じ畑に違う作物の種を蒔いてはならない。」
「うさぎを食べてはならない。」
「リネンとウールを一緒に着てはいけない。」

などなど、今の私達が読むと、

???

としか思えない禁止事項が、聖書には一杯書いてあるわけです。

聖書が書かれた当時のユダヤの世界では、こういう細々した数々の禁止事項にも、何らかの意味があったらしいんですけど、その全てが現在の生活に当てはまるか、と言えば、もちろんそんなわけない。

同性愛だって、ユダヤの民が人口を増やそうとしていた当時の社会においては、精子を無駄にする行為だからっていうことで、他の色んな行為に混じって、禁止条項に挙げられていたわけです。

例えば、精子を無駄にしたオナンという人物は、同性愛者ではありませんが、神の怒りにあって殺されています。(オナニーの語源になった人物とされていますが、実際には妻の体外に射精した、つまり精子を無駄にした罪で没;;)

それに同性愛を禁止するという条項が、エビと比べて重いかというと、そんなことは全くなく、寧ろ何度も繰り返され、強調されている、という点では食べ物に関する禁止事項の方が、遥かに「大罪」として扱われている。

つまり問題なのは、このabominationの解釈の仕方。

聖書をきちんと研究された方は、この言葉を単に、

「ユダヤの戒律、習慣に背く行為」

という意味に解釈すべきだっておっしゃってます。

さらに、聖書の言葉を一箇所だけ取り出して、それをある特定のグループに対する攻撃に利用し始めたのは、ごく近代になってからのことである、そうも指摘されています。

アメリカの近代史を通じて、聖書は黒人や女性を差別する口実に使われ、今はセクシャル・マイノリティに対する攻撃の言い訳として利用されている、そのことをまず理解すべきだっていうこと。

「だからなに?聖書の解釈なんてどうだって良いじゃん。」

っていうのは、アメリカでは言えないんです。このドキュメンタリーでも言われているように、

「聖書にそう書いてあるから、もっと“ちゃんとした”政治家を増やして、警察にホモを逮捕させ、全員死刑にすべきだ。」

そう信じてる馬鹿が未だに存在するから。

TVやラジオ、教会やコミュニティのありとあらゆる媒体を通じて、

「神はゲイを憎んでいる。」

そういう嘘を広める人間が、いかに危険であるかということです。

さらに、この「聖書がゲイを大罪とみなす」っていう解釈から導き出されるのは、同性愛は快楽のみを追求する間違った生き方である、っていう考え方。

アメリカの精神科医、医者、生物学者を始め、まともな頭脳の持ち主は誰一人として、同性愛を病気であるとも、本人の自由意思で簡単に変えられるものである、とも考えていないのに、宗教界がその信者に押し付けるのが、同性愛者への「矯正治療」。

前回書いた映画、『ラターデイズ』の中で、アーロン君が入れられたのがこの「治療」施設。

実際の「治療」の実態は様々だと思われますけど、彼の場合、裸の男性の写真を見せられるたびに、電気ショックを与えられていました。それで裸の男に対する嫌悪を植え付けようという、さすがはモルモン教会!と言うしかない、素晴らしく独創的な治療法です(←嫌味です、念のため;;)

こんなもんで「治る」わけがないのは、ヘテロの男性が女性の写真を見せられるたびに電気ショックを与えられたからって、ゲイにならないのと同じこと。馬鹿でも分かる理屈です。

でも21世紀のアメリカ、一応先進国と呼ばれているはずのこの国で、いまだに中世の黒魔術も真っ青の「治療」が行われている…。

その根本にあるのは、金と力。

「憎しみは人を結びつける、一番チープな(安っぽい、とか手軽な)方法だ。」

そうドキュメンタリーの中で言われる通り、特定のグループを貶めることで、それ以外の色んなグループを簡単に結びつけ、教会への帰属意識を高めることが出来るんです。

そうやって繰り返し教え込まれた「罪」に慄くゲイやレズビアンの子供は、絶望の余り、家族や教会が押し付ける「治療」を進んで受け入れます。

でもその結果、同性への愛が消える訳ではなく、消えるのは自分に対する自信、自分らしい生き方を求める意志だけ。自分自身を隠すことだけが上手くなっても、孤独と絶望は深まるばかり。

このドキュメンタリーによれば、アメリカのゲイやレズビアンが自殺を試みる確率は、ヘテロと比べて3倍から7倍だそうです。アメリカのどこかで5時間に一人の割合で、ゲイやレズビアン、トランスジェンダーの若者が自殺していて、更にその20倍もの若者が自殺を試みている…。

それでも聖書を振りかざして、同性愛者への攻撃を繰り返し、その著書を売り、セミナーを売り、「治療」プログラムを売り、金儲けをする宗教家という名の偽善者、というより犯罪者達が後を絶たない。

そして彼らは、人の無知と恐怖心につけ込むことでその信者を支配し、結果として莫大な富を得ている…。

こういう偽善者には全員、嘘と利殖の罪、それと殺人教唆や自殺示唆の罪も含めて、ぜひ最後は自分達の信じる地獄に落ちて欲しいものです!

(><)

この映画は様々な家族の例を挙げて、信心深い両親を持つゲイやレズビアンの子供達が、苦しみながらも自分なりの生き方を見つけるまでを、インタビューを通して描いています。

中には「あなたのような罪深い生き方は認められない。」って、信心深い母親に言われ、自殺してしまった女性もいます。残された母親は、娘の死後、教会から離れて聖書を研究し、同性愛について学び、今はゲイやレズビアンの権利を守るために闘っていらっしゃるそう。

この映画のポスターの写真は、ゲップハート元下院議員とそのご家族。2004年に民主党の大統領候補に立候補した際、カムアウトしたレズビアンの娘さんと一緒にキャンペーン活動をされたそうです。(ちなみに2004年に民主党の大統領候補に指名されたのは、ご存知ケリー上院議員。)

ゲイであることを公にして初めて主教に選出された、ジーン・ロビンソン主教↓とそのご家族も登場。
Gene Robinson3

就任式でのこの華やかなロープの下には、防弾チョッキを着込んでおられたそうです。それだけ教会内部からの反対が強かったんですね。

文字ばっかりで長々と書いてしまいましたけど(汗)、とても興味深いドキュメンタリーですので、機会があったら是非ご覧になって下さい。

と言っても、日本で公開されたことがあるのかどうかすら謎ですが…。

これから某国営放送局とか、W○W○W様に期待したいです♪

このドキュメンタリーは、2007年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門で、最終15作品には残ったものの、最後のノミネート作品5本のうちには入りませんでした。(ちなみに受賞作品は、アフガニスタンの米軍基地でタクシー運転手が拷問の末、死亡した事実を描いた『「闇」へ(Taxi to the Dark Side)』。)

カリフォルニアの同性婚を阻んだのが、宗教界からの多大な寄付金と信者への呼びかけでした。それを思うと、こういう映画がもっと賞を取って、その結果、沢山の人に見てもらえたらよかったのに、と思わずにはいられません。

こちら↓が予告編


最後に昨日の大統領就任宣誓式のオープニング・コンサートで、上記のロビンソン主教が述べられた祈祷の一部を訳しておきます。(すごく下手ですが;;)

“Bless us with anger – at discrimination, at home and abroad, against refugees and immigrants, women, people of color, gay, lesbian, bisexual and transgender people.”

「我々に怒りの祝福をお授け下さい-差別に対する怒りを。母国であろうと外国のことであろうと、難民や移民、女性、肌の色の違う人々、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー、そういう人々への差別に対する怒りを、我々にお授け下さい。」

Bless us with anger…日本語にするの難しいけど、すごく力強くて感動的です。

でも残念ながら、この素晴らしいスピーチはTVの放送では全てカットされてしまいました。だからアメリカでも、ロビンソン主教がこのイベントで祈りを捧げたことを知ってる人は、殆ど居ないと思われます。

放送しないほうが無難だってTV局が判断したのでしょうか…。HBOは宣誓式を取り仕切っている新大統領サイドからの指示だって言ってるそうですが…。( AfterEltonの記事より。)

…sigh…(ノ_-;)

またリストに載ってない映画の紹介をさせて頂きましたが、ここまで読んで頂いてありがとうございました。次回は順番通り『モーリス』のレビューをさせて頂きますので、宜しかったらチェックしてみて下さい♪

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コメント
この記事へのコメント
とても興味深く読みました!
宗教ってなんだろう・・・って思ってしまいました。
「聖書に書いてあるから」と言い放つ盲目的な
原理主義者がハバをきかせてるってコワイです・・・。
普通の日本人の私には、とても理解できませんが、
そのせいで、それこそ「なんの罪もない」
若いセクシャルマイノリティの人々が命を落としたり、
悲しい日々を送ってると思うと切なくなりますね。
2009/01/20(火) 18:50:39 | URL | sunshine #khTh2OB6[ 編集]
さらに
どうしても見たくなってしまったので、
思わずアマゾンで注文しちゃいました。
私の英語力でどこまで理解できるかはわかりませんが・・・
これからも色々な作品紹介、楽しみにしてマス♪
2009/01/22(木) 04:10:16 | URL | sunshine #khTh2OB6[ 編集]
sunshineさん、こんばんは
>宗教ってなんだろう・・・
本当ですよね。
人を傷つけるための宗教なんていらないのに・・・
sunshineさんのおっしゃる通り、本来なら夢一杯のはずの若者が、
原理主義者(日本語教えて頂いてありがとうございます^-^)の嘘によって、
その可能性を絶たれてしまうなんて、絶対にあってはならないことだと思います。
でもアメリカ社会でいかに原理主義者が影響力を持っていることか、、、
それについて改めて考えさせられたドキュメンタリーでしたので載せてみました。
読んで頂いた上にコメントありがとうございました^▽^
2009/01/23(金) 17:38:00 | URL | あけぼの #-[ 編集]
sunshineさん、こんばんは
なんと!
私の記事を読んで下さって、それでってことなのでしょうか?
なんかすっごく嬉しいです~。
輸入版だと高いんですよね…(汗)
でも同性愛に関する最近の研究とか、もっと詳しい聖書の解釈も聞けるし、
「金返せ。」って思われることは無いと思いますv
(↑すみません、自分を基準にコメントして;;)
もし宜しかったら、是非ご覧になった感想を聞かせて下さい♪
2009/01/23(金) 17:39:16 | URL | あけぼの #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/07/26(月) 21:49:26 | | #[ 編集]
秘密のコメ様、はじめまして
クローゼット腐、分かりますっ!(笑)
非腐な相方さんにはやっぱり内緒ですよね☆

アメリカには極端な保守派がいますけど、でもこういう「宗教家」達も、ほんとは自分の言ってることがおかしいって分かってるんじゃないかと思うんです。
でもとりあえず誰かに対する憎しみを煽ると、不満を抱えている人たちを簡単に集められるし、そうやって人が集まるとそれなりの力が誇示できるようになって、そうなるとお金も集まるから止められない、ということじゃないかと…。
ただホモフォブに関して言えば、どんどん相手にされなくなってきているのも確かで、最近のアンチゲイ集会の様子とか見ると、閑散としていて笑っちゃいますw
このまま同姓婚や職場での差別の禁止等、法律をきちんと整備してこういう連中を永遠に黙らせて欲しいものですvv

そして別ブログにサイトまで遊びに来て頂けているなんて、とっても嬉しいですっ!
もし宜しかったら私もお邪魔させて頂きたいのですが、その時はURLを残さないのは当然として、HNはこのままでも平気でしょうか?(汗)
2010/07/27(火) 21:29:59 | URL | あけぼの #-[ 編集]
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010/07/27(火) 22:04:16 | | #[ 編集]
秘密のコメ様へ
よかったです~☆
近々お邪魔させて頂きますので、その時はヨロシクお願い致しますvv
2010/07/29(木) 21:05:47 | URL | あけぼの #-[ 編集]
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