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アウトレイジ/Outrage
2009年5月にアメリカで公開されたドキュメンタリー映画。

“Outrage”『アウトレイジ』をようやく見ましたv
outrage-poster

日本では映画祭で公開されたそうですけど、DVDで見られるかどうかは例によって?です;



こちらの記事は映画を見る前に書いたものですけど、映画を見る前に読んだ殆どのレビューは「絶賛」というより、「まあまあ」って感じだったんです。

それはこの映画に、「伝えたいメッセージを強調するための多少の誇張がある。」からかもしれないと思いました。

この映画は、ゲイであることを隠して権力を手に入れた政治家達がいかにゲイライツに反対してきたか、そしてそれがどれだけ沢山の人を傷つけてきたか、ということをクローゼット議員一人一人を例に挙げて検証していきます。

公的な立場の人間が公けの顔とプライベートの顔を無理に分けようとすることで起こる、何よりも本人が経験する辛さがまず強調されていました。

もちろん、そのメッセージ自体はその通りだと思うし、監督さん始めスタッフの方もきちんと事実関係をリサーチして映画を作られたんだとは思うんですけど、ただ映画を見ながらたまに、

「この人が偽善者ってことを強調したいのは分かるけど、でもちょっと偏り過ぎ?」とか、
「何でこの人のことは晒してるのに、あの人に関しては何も言わないわけ?」

って思うところがあったんですよね(汗)

例えば、元ニューヨーク市長コッチとその恋人だった男性、リチャード・ネイサン氏に関するエピソード。

映画の中ではコッチは市長に当選された途端、恋人だったリチャードさんをNYから追放して、彼がNYに戻ろうとすると脅迫し、リチャードさんはその後カリフォルニアで孤独のうちにエイズで亡くなりました、みたいな感じの描かれ方なんです。

これだとリチャードさんは「偽善者コッチのいたいけな犠牲者」、みたいなんですけど、これはちょっと事実と違うみたい?

前NY市長ジュリアーニ氏(コッチの後、ブルーンバーグ現市長の前のNY市長)について書かれたバイオグラフィー“Rudy!: an investigative biography of Rudolph Giuliani”によりますと、リチャードさんはコッチとの関係を利用してNY市の仕事を回して貰った、という疑惑を持たれ、その捜査のためにカリフォルニアからNYに召還されたことがあったらしいのです。(この本↑はグーグルブックで読めますので、英語の分かる方はチェックしてみて下さい。)

コッチに仕事上の便宜を図ってもらっていた可能性があるとすると、リチャードさんも単なる犠牲者とは言えないわけで、そこら辺を完全にスルーするってどうなの?っていう気もします;

80年代にエイズが蔓延し始めた頃、NYの市長だったコッチはゲイコミュニティやエイズ患者を助けるために、何一つしなかったっていうことも強調されていました。

確かにエイズに関してはその通りなんですけど、コッチが市長としてゲイライツに関する法案を積極的にサポートし、1986年にようやく法案が市議会を通ると、それに自らサインしたのも事実だそうなんですね。

cipel_koch
(ちなみに↑左は元NJ知事ジム・マグリーヴィの彼氏だった方で、右がコッチ。画像はこちらから。)

逆にカムアウトしてる下院議員のバーニー・フランク氏(↓右)は、クローゼット議員と比べて「正義の人」みたいな感じで登場して、「偽善者は許されるべきではない。」って主張するんですけど、ご本人が映画の中で言ってるとおり、その彼も下院議員としての最初の15年間はカムアウトしてなかったわけです。
Barney_Frank_and_friend

さらに言えば、彼がカムアウトした状況も決して自慢できるようなものでは…(汗)

1987年当時、フランク議員はゲイの売春組織に属する男と付き合っていて、その組織の拠点が彼の所有するワシントンDCのアパートだった、というのはTVで見た有名な話。本人は自分のアパートで何が行われていたか全く知らなかったと供述してるそうですが…。

そこら辺はこの映画では完全にスルーでした^^;

ただ彼はユダヤ系で人種的にもマイノリティな上に、政治家としては致命的なリスプ(舌足らず?)というハンデがあるにも関わらず、下院の金融委員会委員長という重要な役職についているわけで、カムアウトしてる政治家としては最も力のある人には間違いないんですよね。

ゲイ雑誌のOUTマガジンが、2008年に彼を最もパワフルなゲイに選んだのも頷けますし、そういう人の過去のスキャンダルはあえて述べないってことでしょうか…。

ドキュメンタリーって、自分の伝えたいことを強調するために特定の事実だけを選択したり、「関係ない事実」は無視したり、って結構あることですけど、政治家に関して語る場合、アメリカには「政治オタク」が沢山いてこういう事実関係のチェックには特にうるさいし、どの政治家に関するニュースも全てネットで読めるということを考えると、ドキュメンタリーとしてはもうちょっと公平な方がよかったかもって思いました。

後は、Foxニュースのキャスター、シェパード・スミス(↓左)のことは「ほんとはゲイ」って批判してるのに、CNNのアンダーソン・クーパー(↓右)に関しては全く触れていないのはなぜ?という疑問も…。
shepherd-smith_anderson-cooper

確かにFoxニュースはFoxのオーナーの意向を反映して、常に保守的で反ゲイライツですけど、シェパード・スミスはキャスターであって、政治家じゃないのに…。

保守的な政治家が実はゲイ、っていうスキャンダルが殆ど報道されないのは、メディアもそういう政治家と繋がっていて彼らを守っているからで、そういうメディアにも責任がある、ってことみたいですけど、それならCNNだってほぼ同罪じゃないの?

「誰が何をしたら偽善者で、晒される対象になるべきなのか?」

というのがこの辺から曖昧になる気がするんですけど…。

それに映画の中でもちょこっと触れてましたけど、メディアがアウティングされた政治家に関して余り報道しないのは、ゲイであること自体は犯罪でも何でもないから、っていう方が大きいと思う。

だからマイク・フォーリーみたいに子供が関係してる場合とか、ラリー・クレイグみたいに公共の場所(空港のトイレ)で性行為を行おうとする、みたいな犯罪要素がある場合には、メディアも大々的に報道するんですよね。

そう言えば、この映画の公開後、マイク・ロジャーズ氏はセレブ・ブロガーって呼ばれて、TVに登場するようになってるんですけど、そのせいか彼の一番最近のターゲット、サウスカロライナ州副知事のアンドレ・バウアーのアウティングに関してはニュースでもかなり取り上げられていました。
andre bauer

サウスカロライナと言えば、突然失踪したかと思ったら実はアルゼンチンの愛人と会っていた、例のマーク・サンフォード知事が今まさに辞任を迫られているところ。もしサンフォード知事が辞任した場合、副知事のバウアー氏が知事になる可能性があるわけですけど、彼はゲイライツに反対する極端な保守派なんですね。

だから「彼は本当はゲイの偽善者なんだ。」って暴くことで、絶対に知事にはさせないというのが今回のアウティングの目的らしい。

現フロリダ州知事のチャーリー・クリストが昨年結婚したのは、オバマ大統領の対立候補だった共和党のマッケイン議員から副大統領候補として選ばれる可能性があったからだ、ということも映画では強調されていました。
charlie-crist-wife

彼は2012年には共和党の大統領候補になる可能性があるから、「ゲイライツに反対してる偽善者のゲイだ。」って今のうちに叩くことに意義がある、ということらしい。

うーん;

でもそう言われても、私はやっぱりアウティングは違うって思う。

偽善者の政治家のプライバシーを守る必要があるかないか、という問題はともかく、こういうやり方は戦争で言うならゲリラ戦で、いくら局地戦で勝っても、最終的に戦争には勝てない気がするんですよね。

Win the battle but lose the war. . .

アメリカのLGBTコミュニティの目標が、

1) 結婚の権利を始めとする「法律上の完全な平等」
2) レイプや殺人を含む恐ろしいヘイトクライムを止めさせること

にあるとすれば、それを達成するベストな方法は、自分達のポジティブなイメージをアピールすることじゃないかなー。

こういう政治家のアウティングって、そういう意味では逆効果になりかねない?

それにその政治家がゲイかどうかっていうのは、投票する立場の人間にとってはあんまり関係ないはず。

もしチャーリー・クリストが本当に2012年にオバマ大統領の対立候補になったとして、彼がゲイであろうとなかろうと、私は彼みたいな政治家に投票する気は全くない。

逆に殆どの保守派の連中は、彼がゲイライツだけじゃなくて、女性の選ぶ権利にも銃規制にも反対の保守派の「仲間」だから、という理由で彼に投票するはず。クリスト本人がカムアウトすれば話は別かもしれませんけど、それはまずないですからね…。

そういう意味でもアウティングにどれだけの効果があるのかは謎です。

それとこの映画には、「ログキャビン・リパブリカン」と呼ばれるゲイの共和党員も何人か登場しますけど、ゲイの権利を求めること以外は完全な保守派で、自分達以外のマイノリティや貧しい人達への福祉・サービスを取り上げるのは平気な連中が、ちゃんとカムアウトしてるっていうだけで偉そうに語るのもどうかと思う;


とまあ色々書きましたけど、アメリカのLGBT関連のニュースに詳しい人じゃないと知らないようなコアな話もカバーされてますし、映画自体は十分見る価値はあると思いますv

ただ私的には、どうせならもっと素敵なLGBTの政治家や活動家の方についての映画を見たいな、と思いました^^

こういう映画は見てて暗くなるんですよね。書いてても暗くなるし…って、読んでる人はもっとうんざりでしたよね、すみません;

最後に前回書いた記事のつべが落ちていたので、一応もう一度トレイラーを貼っておきます。


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