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ミステリアス・スキン
「最高のゲイ映画」16位(今年21位)は、2004年公開のアメリカ映画。

"Mysterious Skin"『ミステリアス・スキン』
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この映画の感想、というか、この映画を見たリアクションを一言で言うなら、


吐いた。

・・・・・・・・・∑( ̄Д ̄;)


以下、完全ネタバレ;

この映画が子供への性的虐待を描いたものだという予備知識はあったので、一応Wikiであらすじを読んで、見てもOKかどうかチェックはしたんです。

「8歳の時、リトルリーグのコーチに性的虐待を受けた2人の少年、ニールとブライアン。ブライアンはその記憶を失って自分はエイリアンに誘拐されたと思い込むようになり、ニールは年上の男ばかりを相手にする男娼になる。ラスト、19歳になった二人は再び巡りあい、その時から癒しへのプロセスが始まる。」

さらにウィキピディアには、

「グレッグ・アラキ監督は子役のことを考えて、虐待のシーンは直接的な表現を避け、フィルムの編集によって何が起こったか観客に分からせるようにした。」

とも書いてありました。

だから私は、『ミステリアス・スキン』っていうのは、グロい描写は極力控えた映画で、それも最後はハッピーエンドなんだ、って信じて見始めたんです。それなのに…

Wrooooong!!><;


設定を最初からもう少し分かるように書きますと…

8歳のニールは、若くてセクシーなシングルマザーの母親とカンザスの田舎町に住んでいます。

母親は次々に違う男を家に連れ込んでいて、そんな母親と男達を見てきたニールは、8歳で既に男に惹かれている自分を自覚しています。

そしてリトルリーグに入った途端、そのコーチに魅力を感じてしまうんです。
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これがニ-ルにとっての最大の悲劇になります。なぜならコーチは子供を性的に利用するペデファイル(pedephile幼児虐待者)だったから。

コーチに認められようと頑張るニールは、直ぐにチームのスター選手になって、母親が男と会っている夜はコーチの家で過ごすようになります。コーチのお気に入りである自分が、嬉しくてしょうがないニール。

でもある夜、コーチはその正体を現し、ニールに彼のキスを受け入れるように迫るんです。

コーチが好きっていう感情があったからこそ、彼に言いくるめられ、彼の行為を受け入れるニールが、すごく悲しい…。

確かに子役の子が出てくる場面は、直接的な描写は避けてますけど、それでもこのシーンには、心臓が胃の辺りに下りてくるような、なんとも言えない気持ちにさせられます。


ニールはその後、その田舎町の公園で年上の男を引っ掛ける男娼になります。

14歳になったニールを演じるのはジョセフ・ゴードン・レヴィット↓
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いくら演じてる俳優さんが大人(当時23歳)でも、設定は14歳の子供なわけです。彼は特に凄く華奢で子供っぽく見える。

それなのに、ここから映画は延々とニールのオヤジ相手の援交シーンを撮り続けます。最初の髭オヤジとのシーンで、オヤジが彼の服を脱がせるんですけど、心の底から「止めてくれ!」と思いました。

何の感動もないセックスを延々と続けるニール。コンドームも使わず安全にも無頓着。


「この田舎町のオヤジ全員とやった、2回はやった。」

そう言うニール↓(左端)は19歳になると、友達のウェンディ↓(右端)を追い駆けてNYに行き、そこでも男娼を始めます。
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そこでまた延々と彼とオヤジとの援交シーンが続いて、心配したウェンディが、

“We are not in Kansas anymore, Neal.”(『オズの魔法使い』のもじり)

そう言って、ニールに気をつけるように忠告するんですけど、それにもマリワナを吸いながら「OK」って生返事を返すだけ。

ちなみにこのシーンで流れるスローダイヴの曲『ダガー』が、放心したようなニールのなんとも切ない表情↓にぴったりで、とても印象的。
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The world is full of noise yeah
I hear it all the time
And me I am your dagger…

世界は騒音に満ちている、そう
僕はいつもそれを聞いている
そして僕は君のナイフだ…

この映画のこういう描写の仕方はとっても好きなんですけど…。

残念ながら、この後映画はどんどん暗さを増していきます。その極めつけはニールが暴力男にレイプされるシーン。

コーチに似てる男に誘われたニールは、男の部屋についてきたところで、ベッドに放り投げられてレイプされそうになります。とりあえずバスルームに逃げ込むんですけど、それ以上逃げ場がなくて座り込んでると、バスルームのドアの簡単な鍵が外から男に開けられちゃうんです。

この鍵の開くところと、それを見詰めるニールの顔のアップ、心臓が痛くなるほど怖いです。

それだけで十分。だから後はそのまま暗転するだろう、そう思って油断してたから、その次のレイプシーンをちょっと見てしまった;

残りは慌てて飛ばした。余りにも酷いから…。

その後、血まみれのまま外に放り出されたニールが「Mom…」って母親を呼ぶんです。息子が虐待されていたことにも気がつかない、いつまでも子供みたいな母親なのに、それでもボロボロに傷ついた彼の口をついて出たのはその母親を呼ぶ声…。

この辺でもう、悲しいとか可哀想とか、そういうレベルを超えてしまいました。頭から血の気が引いて、それ以上見ていられなくなって、悪寒がして座ってられなくて…

しまいに吐いた;


この映画のジョセフ・ゴードン・レヴィットは凄いです。複雑なニールのキャラを完璧に演じていて、自分の中から全ての痛みを引きずり出して、ニールに投影させたのかと思うくらい。

その彼の演技だけで、充分にこのシーンの怖さは伝わるのに…なんであんなレイプシーンを実写で撮る?

(><;)


その間、もう一人の少年ブライアン(ブレイディ・コーベット)は、子供の頃の記憶が飛んでいることをエイリアンに誘拐されたせいだと決め込んでいて、高校生になった時、エイリアンに誘拐された経験をTVで話していた女性、アヴァリン↓(右)に会いに行きます。
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このアヴァリンがまたとんでもない女で、まだ性的に未熟なブライアンを押し倒そうとしたりするんです。

それでもアヴァリンに自分の経験を話すうち、ブライアンは「自分と一緒にエイリアンに誘拐された少年」のことを思い出します。そして昔のリトルリーグの写真に、ニールの顔を見つけ出すんです。

写真の裏にあったニールの名前を頼りに彼の家を探し当てたブライアンは、NYにいるニールがクリスマスに家に戻ってくるのを待つ間にニールの友達と仲良くなって、彼に昔ニールと一緒にエイリアンに誘拐された話をします。
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それを不思議に思った友達は、ブライアンの話を葉書に書いてニールに送り、ブライアンがニールに会いたがっていることを伝えます。

そしてクリスマス。

レイプされた男に殴られた顔を腫らして家に戻ってきたニール↓は、母親には強盗に襲われたって嘘を付いて、ブライアンが訪ねて来た時は部屋に閉じこもっていました。
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でもブライアンが来たことを知って、ニールは部屋から降りてきます。

彼にはブライアンが誰で、彼が何を知りたがっているか良く分かっていたから…。


コーチが当時住んでいた留守の家に忍び込み、そのことが起こった場所でブライアンに全てを話すニール。

詳細はとても書く気がしませんけど、コーチの「一番のお気に入り」だったニールは、他の少年を安心させて家に連れ込み、コーチの行為を手助けする道具にされていたんです。

本当のことを知って、ニールにしがみついて震えるブライアンと、そのブライアンを抱えるニール。
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ウィキピディアには、これがお互いの癒しへの始まりだ、って書いてありましたけど、私にはとてもそう簡単にいくとは思えません。ブライアンとニールがこの後、二人で助け合って一緒に立ち直るなんて現実には無理。

だって溺れている人間に、沈んでいく人を助けることは出来ないから…。


子供を性的に虐待する人間を「モンスター」って呼びます。

「モンスター」を見つけたブライアンには、まだ希望があると思う。少なくとも彼にとって、モンスターは対決すべき存在で、そのことはハッキリしてるから。

ニールは…彼はどうすればいいのか…。

友達のウェンディがニールのことを、

「心があるべき場所に底なしのブラックホールがある」

って言うんですけど、それはニールの傷が、その心を潰されるほどに深いから。

父親がいないニールにとって、「モンスター」は「愛情」と「信頼」を感じた相手でもあったんです。そしてその「愛」を繋ぎ止めるために、他の子供への虐待を「進んで」手伝ったニールは、自分を「加害者」だと感じてしまっている。

彼こそが一番の犠牲者なのに…。


力でニールを征服する代わりに、コーチは優しい言葉と嘘の「愛」でニールの心を屈服させ、ニールに言って聞かせます。

“You liked it. It’s OK you liked it.”
「君はアレが好きだ。アレが好きで良いんだよ。」


子供の自我をここまで破壊する人間は、まさにモンスターとしか言い様がありません。


ラストは贖罪のようなニールの独白。


“As we sat there listening to the Carolers, I wanted to tell Brian it was over now, and everything will be OK. But that was a lie. Plus I couldn’t speak anyway. I wish there was someway for us to go back and undo the past, but there wasn’t. There was nothing we can do. So I just stayed silent trying to telepathetically communicate how sorry I was about what did happen. Then I thought of all the grief and sadness and fucked up suffering in the world, and that made me wanna escape. I wish with all my heart we could just leave this world behind…rise like two angels in the night and magically…disappear….”

「クリスマスキャロルを聞きながら、ブライアンにもう全部終わった、何もかも大丈夫って言ってやりたかった。でもそれは嘘だ。それにもう口が利けなかった。過去に戻ってやり直すことが出来たらどんなにいいか。でもそれは無理だ。俺達に出来ることは何も無かった。だから俺は、過去に起こってしまったことについてどんなにすまないと思っているか、黙ったままで彼に伝えようとしていた。そしてこの世の嘆き、悲しみ、酷い苦しみについて考えたら逃げたくなった。この世から逃げ出すことが出来たら、そう心の底から望んでいた。夜の中で二人、天使のように浮き上がり、そのまま魔法のように…消えてしまいたいと…」

そしてカメラは、上から下へ落ちていく二人の姿を映して終わります。

流れる曲はシガーロスのサムスケイティ(Samskeyti)。

アイスランド語でジャンクション、「合流点」を意味するこのシンプルなピアノ曲の美しさが、ただただ哀し過ぎるエンディングでした。


こちら↓は予告編


この映画が伝えようとしていること、描こうとしていることは語る必要のあることだと思います。

だけど映画を見て泣くことはあっても、さすがに吐いた覚えはありません。

残念ですけど、「良い映画」って言うには、この映画には正視に耐えない場面が多過ぎる。ジョセフ・ゴードン・レヴィットの演技が素晴らしいだけに、惜しいなあって思いました。


最後はニール役のジョセフ・ゴードン・レヴィットとブライアン役のブレイディ・コーベットのツーショット。
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特に意味はないんですけど(汗)、こういう映画って俳優さんにも結構トラウマ?って思うので、ハードな役をこなした二人が仲良しの写真を見ると、何となく安心するのでした^-^

「単なる萌えだろ?」

っていう突っ込みを、きっぱり否定できない自分がとても悲しい…^-^;

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コメント
この記事へのコメント
こんにちはー。
wiki覗いたら東京L&G国際映画祭で公開されたと書いてありましたが、ニッポンで一般公開されてなく、TSUTYAで借りることもできず(><)。良い映画なのかどうかはともかくとして、こういった重みのありそうな映画を観ることができず残念です。
でも記事がわかりやすかったので想像もしやすかったです。
映画の内容とは全く違うけど、萩尾望都の描いた漫画『残酷な神が支配する』を何となく思い出してしまいました。
2009/09/21(月) 19:15:54 | URL | jumpi #w7E8CPEA[ 編集]
jumpiさん、こんばんは
この映画はアメリカでもごく一部の映画館を除いては公開されてないです;
この内容、というか撮り方じゃ無理ないとおもう…。
子供への性的虐待、特に男の子への虐待を扱った映画としては人物の描写が物凄くリアルで、俳優さんも素晴らしい演技なのでほんと勿体ないんですけど…。

>『残酷な神が支配する』
読んでないんですけど、ちょっと苦手な感じが…^^;
でも読んでみたら面白いのかな~。
2009/09/22(火) 19:07:39 | URL | あけぼの #-[ 編集]
それは辛いです~あけぼのさん!!
しまいには吐くくらいの映画って…身を張ったレビューに感謝です!
日本ではどうやら鑑賞できないようで、ほっとしたというか…(;→д←)

全然、系統は違いますがビョーク(このカタカナであっているのかな?歌手の方です)が主演の「ダンサーインザダーク」という映画もほんっっっっっとに救いもなく、ただただ一生懸命生きても意味はないのかもと思わされる内容で映画館の帰りにすごーく辛くなったことがあります。その時よりきっと悲しい気持ちになるんでろうな…と思わされるような内容のようで…心中お察しします。

子供が辛い目にあうのはもちろん、実年齢よりずっと若く見える主演のジョセフくんがひどい目にあわされるのかと思うと想像だけでもちょっと悲しい…ラストシーンのつべ拝見しましたが英語のわからない私ですが、なんだか2人が暗い海の底に沈んでいってしまうように感じました。
2009/09/26(土) 23:28:07 | URL | chihiron #-[ 編集]
chihironさん、こんばんは
>身を張ったレビュー
ほんとですね!笑
とりあえず一度見るのをやめて、2日に分けて見ました^^
でも途中で止めなかったのは、俳優さんが上手いのと、ストーリー自体はリアルでよく出来てるからなんです。
だから監督さんの撮り方に問題があると思いました;

ビョークはアカデミー賞で見ました!
確かこの映画の主題歌でノミネートされていて、とんでもない白鳥の衣装で歌っていたはず?!
http://www.youtube.com/watch?v=Iwx6oOhrKes
これです~。
これを見て勝手にコメディなのかと思っていたら…実はイタい映画だったんですね;

感情移入したキャラが酷い目に遭うのを見るのは辛いですっ。
ストーリー上そういう展開があるとしても、実写でこれはないと思う見せ方でした;
>なんだか2人が暗い海の底に沈んでいってしまうように
ほんとですね…こういう子達が現実に居ることを思うと、もっと沢山の人に見てもらえるような映画にして欲しかったって思います。
2009/09/27(日) 19:58:21 | URL | あけぼの #-[ 編集]
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