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『波に流れて』~Contracorriente
2009年にペルーで公開され、アメリカでは2010年のサンダンス映画祭でワールドシネマ・ドラマ部門の観客賞を受賞した作品。

“Contracorriente”(英題は“Undertow”)
202Contracorriente

日本でも『波に流れて』というタイトルで、2010年の「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」で上映されているそうです。

ゲイ映画を観て、というより映画を観てこれだけ泣いたのは久しぶりで、特にラストシーンは涙が止まりませんでした。

主役の俳優さん達の演技はもちろん、美しいペルーの漁村を背景にした完璧なシネマトグラフィー、そして音楽、もしくは音を削った繊細で緻密な演出は、これがハビエル・フエンテス・レオン監督の初監督作品とはとても信じられません。

なんかこう久々に、

ああ、映画ってこういうものなんだ…(涙)

って、素直に感動。こんな素敵な作品にめぐり合えたことに感謝しました。

日本ではDVDが手に入らないと思うので、以下、ネタバレしてしまいますが、英語字幕、もしくはスペイン語でご覧になれる方は、先に映画をご覧になることを全力でお勧めいたします(_)




冒頭、嬉しそうに膨らんだ妻のお腹に顔を当てるのは、主人公のミゲル(クリスチャン・メルカド)。

若い夫婦には、もう直ぐ初めての子供が産まれます。
202Contracorriente2

医者から男の子だと聞いて、大喜びするミゲル。

そんなある日、ミゲルの従兄弟の青年が亡くなります。

「お前は神様と好い関係にあるから。」

と彼の兄に頼まれたミゲルは、そのお葬式で彼を「送る」役目を任されることになりました。

202Contracorriente3

彼らの住む村では昔から、死者の魂が迷わず天に召されるように、遺体を神に捧げ、海に埋葬する習慣があるのです。

そんな神聖な儀式をしかし、道の脇からカメラでパチパチと撮影する青年の姿が…。

村人の冷たい視線を浴びる彼はサンチアゴ(マノロ・カルドナ)。

彼は村はずれの大きな別荘に住む、都会からやって来た画家ですが、「よそ者」の上に「オカマ」というレッテルを貼られ、村人からつまはじきにされています。
202Contracorriente4

葬儀の後、亡くなった青年の兄にお悔やみのためにお酒を振舞おうとして、それすら拒否されるサンチアゴ。さり気なくとりなすミゲル。

そしてその直後、村はずれの廃墟で佇むサンチアゴの元をミゲルが訪れるシーンで、初めて二人の関係が明らかにされます。

そう、二人は人目を偲んで会い続ける、恋人同士だったのでした…。

お悔やみを言おうとした気持ちを拒否されて傷ついたサンチアゴは、特に意地悪な村の若者についてミゲルに言います。

「あいつほんとはゲイじゃないか。」(←ホモフォブほど隠れホモという常識)
「おいおい、誰もが君みたいって訳じゃないぞ。」(←ゲイは自分以外の特殊な人という認識のミゲル)
「違うよ。誰もが君みたいに思えるんだよ。」(←恋人は無自覚な隠れホモ)

この二人の間のこういう台詞の上手さがなんともさり気なくて、でもこれだけで二人の立場、考え方、ミゲルのマチズモに対する拘り、色んなことを分からせてくれます。

結婚してるし、子供が出来たから、「本物の男」であるはずの自分はサンチアゴとは違う。そう思い込もうとするミゲル。

「だったら俺とやってる時の自分の顔を見てみろよ。」

なんて、激萌えな台詞をサンチアゴに言われたりしてます♪

とにかくいつも奥さんと子供、親戚の都合まで優先するのが当然というミゲルに、

「じゃあ俺は何なんだ?」

ってなるサンチアゴですけど、彼はとにかくミゲルを愛しているので、彼の態度に苦しみながらもそんな恋人から離れられません。

そしてミゲルも、サンチアゴが離れていくことには耐えられず、ただこのままの関係が続けばいいと願っています。

彼らが二人きりで過ごす穏やかな時間がどれだけ貴重なものか、見ている観客にも伝わってくるような、美しい浜辺でのラブシーン…。
202Contracorriente5

人気のない砂浜で愛し合う二人がとてもリアルで、BGMをあえて入れない吐息だけの演出が、逆に緊張感を増して素晴らしかったです。


でもそんな二人の関係は、ある日突然終わりを告げます。

帰宅したミゲルの家の居間に、サンチアゴが座っていたのでした。

妻に見つかる前に慌てて彼を追い出そうとするミゲルですが、居間に現れた妻はそんなミゲルを不思議そうに見詰めます。

そう、彼女にはサンチアゴが見えていないのです。

ミゲルだけに見えるサンチアゴは、自分は波にさらわれて溺れてしまったのだと訴えます。

それはミゲルへの想いを残して地上に止まった、サンチアゴの亡霊だったのでした。

「このまま一人で彷徨うのは辛い。」

と涙を流すサンチアゴに、ミゲルは彼の死体を捜して、彼が無事に天国に行けるよう、村の習慣に従ってきちんと埋葬することを誓います。

202Contracorriente6

でもなぜかミゲルは、今でも生きていた頃と同じようにサンチアゴの身体に触れることができ、しかも彼と一緒に堂々と村の中を歩いたりも出来るようになりました。

最初のショックが過ぎると、彼はこのままもう少しサンチアゴと一緒に居たいと思い始めます。

そしてせっかく見つけたサンチアゴの死体を海底の岩に縛り付けると、そのまま黙ってサンチアゴの亡霊と会い続けるのでした。


そのうち村人達もサンチアゴが姿を見せなくなったことを不審に思い始めますが、そんなある日、村の若い男女が無人になった彼の別荘にこっそり忍び込みます。

そこで彼らが見たのは、壁に掛けられたミゲルの等身大の裸体画でした…。

あっという間に村に広がった二人の噂は、やがてミゲルと妻にも伝えられます。

それでも全てを否定するミゲルに、最初は冷たかった村人達の態度も和らぎ、やがてその噂も静まると、ただ一人ミゲルから真実を伝えられた妻も、産まれてきた子供のために彼とやり直すことを決めてくれるのでした。

だからもう会えない、そうサンチアゴの亡霊に別れを告げるミゲル…。

けれどサンチアゴの死体は縛り付けておいた岩から流され、見つけられなくなっていたのです。

「それならもう二度と自分のことを想ったりしないでくれ。」

そう言って恋人の亡霊は、ミゲルのために黙って一人、彷徨い続ける孤独を受け入れます。


そうして全てが丸く収まるかと思われた矢先、しかし沖に出た村の漁船がサンチアゴの死体を引き上げたのでした…。

村の人間はミゲルを受け入れると決めたけれど、それはミゲルがサンチアゴとのことを無かったことにしたからこそ出来たこと。

これ以上のゴタゴタはごめんとばかり、誰もミゲルにサンチアゴの死体が発見されたことを伝えません。

ただ一人、ミゲルに一時ほのかな恋心を抱いていた若い女性だけが、ミゲルにそのことを伝えます。

彼女は実はミゲルの絵を見つけて噂を広めた張本人でもあるのですが、この彼女も、お話が進むにつれて変わっていく様子がとても良かったです。

明日になれば、サンチアゴの家族が都会からやってきて、彼の遺体を連れて行ってしまう…。

ミゲルはとうとう、自分のサンチアゴへの想いを認める決意をします。

そして妻に、自分の手でサンチアゴの遺体を海に返すと伝えたのでした。

「今も彼を愛しているのね?」

という妻に、泣きながら頷くミゲル。

「このまま何もしなければ、皆そのうち全てを忘れてなかったことにしてくれるわ!」

そう訴える妻にミゲルは言います。

「でも君は決して忘れられない。そして僕も…。」


翌日、サンチアゴの別荘で、彼が残した自分の絵に囲まれながら、ミゲルはサンチアゴの母と妹に、この地の習慣に従ってサンチアゴを埋葬させて欲しいと頼みます。

その頼みを撥ね付けた母親はその場を立ち去ろうとしますが、ミゲルは必死に訴えます。

「僕はきっと妻と別れることになる。息子とももう会えるかどうか分からない。それは全て僕が彼を送ると決めたからです。そうすることを彼が僕に望んだからなんです。」

彼の言葉に、母親はようやく頷き、そしてミゲルは一人、彼の遺体を埋葬するために葬送の儀式を始めるのでした…。

202Contracorriente7

そんな彼を遠巻きに見るだけで、葬列に加わろうとしなかった村人達ですが、まずサンチアゴの遺体のことを教えてくれた彼女が彼氏の手を引っ張って葬列に加わると、それをきっかけに数人の村人が葬列に参加し、ミゲルと親しかった若者が輿を一緒に担ぎ始めます。

そして海辺での葬儀の後、ミゲルは一人、ボートで海に漕ぎ出して、恋人の身体を抱き締めると、海に返してあげるのでした。

最後に現れたサンチアゴの亡霊とミゲルのキス、一人ボートで夕日の海を村に帰るミゲル、エンドクレジットの前に画面の隅に現れる、

「この映画を両親に捧げます。」

という文字に号泣…。

学歴もなく財産もなく、自分の生まれ育った小さな村で、これから漁師として生きていくしかないミゲルにとって、その村の誰にも相手にされなくなることほど恐ろしいことはないはず。

それでも自分の家族や友人、これまで信じてきた価値観の全てに逆らってまで、自分の心と愛する人への想いに忠実であることを選んだミゲル…。

最初は勝手なことばかり言って、自分の都合だけサンチアゴに押し付けていたミゲルのこの変化に、とても胸を打たれました。


私の駄文では到底良さが伝わらなくて申し訳ないですが、舞台になっているペルーの海岸↓は、息を呑む、というのがぴったりの美しさ。
202Contracorriente8
しかもそこでラテンのイケメンさん達が絡み合うという…

それだけで見る価値ありですよね?(^^

主役の俳優さん達はお二人とも本当に素敵で、サンチアゴ役のマノロ・カルドナ(↓左)はコロンビア出身で、ラテンアメリカでは有名な大スターだそう。
202Contracorriente9

確かに正統派のハンサムさんって感じでしたvv

でもとにかく魅力的だったのは、ミゲル役のクリスチャン・メルカド(↑右)。この方はボリビアの俳優さんで、スティーブン・ソダーバーグ監督の『チェ』にも出演なさっているそうです。

お隣の男性はハビエル・フエンテス・レオン監督ですが、この映画の製作に、資金調達を含めて6年掛けたそう。

映画の公開後、そのシネマトグラフィーの美しさや叙情的な描写を、『ブロークバック・マウンテン』と比較されたそうですが、それに対し、

「ゲイ映画を全て幾つかのパターンに当てはめて片付けようとする批評家共の怠慢。」

とバッサリ切り捨てておられます^^

その彼のインタビューもとても面白かったので、興味のある方はぜひ。


こちら↓は例によってトレイラー。


もう一つおまけ♪


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コメント
この記事へのコメント
ちょっと幻想的な雰囲気の映画のようですね。
ラテンアメリカの映画ってリアリズムと幻想性がうまくミックスされた作品が好みです。
この作品もその部類に入るのかも、と思いました。

6年の期間をかけて丁寧に撮られた作品なら、素晴らしそうでうすね♪

ポスターもグラビアのようにきれい。

美しい風景にイケメンに絡み合いwにも惹かれます。

2011/10/14(金) 08:02:43 | URL | ミオ #785YtZ7g[ 編集]
ミオさん、こんばんは
前半はとてもリアルな映画なのに
途中からゴーストストーリーになって
実はその手の映画が苦手な私としては(汗
「あれれ?」って感じだったんですけど
おっしゃる通り、幻想性が主人公の気持ちを追う鍵になる
素晴らしい作品になっていましたvv

美しい風景の撮り方も本当に素敵で
そこで愛し合うイケメンさん達にうっとりでした♪
2011/10/16(日) 19:16:09 | URL | あけぼの #-[ 編集]
@けじめのつけ方
いままでになかったような
最後に
”言い知れないもの”を感じましたね。

あけぼのさんが言うように、
ミゲルのこれからは正直、
世間一般で言うところの
”明るいものがみえない”かもしれないけど、
それは他人が思うことで、
ミゲル自身は、正直であれたことを
良しと思う、受け入れたことを身に
活きて行くんだろうなと
なにか染みていくものを感じました。

日本のゲイなシーンの結末は、
どこか受け入れるどころか
未消化で、
結局は良識とか言うものに
とらわれて、踏み出せず
後悔に泣きくれるような気がします。

ブローバックマウンテンも悪くないと思いますが、
それはそれ、これはこれだと思いますよ。
映画を、この作品に限らず、
なんとかに似ているとか、なんとかを思わせると
単純に割り切れない、
同じものはないんだと思えたら、
それだけでも、めっけもんだと思いましたよ。
2011/10/18(火) 04:34:38 | URL | すずら #l6TKZH6o[ 編集]
すずらさん、こんばんは
おっしゃる通り、最後は”言い知れないもの”を感じました。

ミゲルのこれからも決して簡単にはいかないだろうけど
でも彼さえ自分自身を見失わなければ
理解してくれる人は必ず現れる
そう思わせてくれる力強い終わり方で
その点がブローバックマウンテンとは違うし
監督さんも、ゲイが主人公というだけで
一緒にするなって言いたくなるんだと思いました^^

この映画はゴーストが登場したりしますけど
ファンタジーというより寓話という感じで
主人公の気持ちの変化に凄く共感できて
飽きさせないし、うそ臭くならなくて
本当に良く出来た作品だと思いましたvv

日本のゲイ映画は余り見られないんですけど
どんなお話なのかとても興味があります。
BL映画は幾つか見たんですけど
呆気にとられるほど酷かったですが…;
2011/10/20(木) 20:21:19 | URL | あけぼの #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/10/20(木) 21:37:53 | | #[ 編集]
秘密のコメ様へ
こちらこそ、お返事ありがとうございました。

東京国際レズビアン&ゲイ映画祭
色んな映画が上映されていてほんとに楽しそうです!
もしまた行かれることがありましたら
ぜひ感想を聞かせて下さい。

BLでもマンガや小説はそうでないのも多いんですけど
たまたま見た映画はかなり悲惨なものがありました。
すね毛がどうこうと言うより(汗
ただただ主人公を悲惨な目に遭わせて
悲劇に酔うのが目的としか…;
絶対にハッピーエンドであるべきとも思いませんけど
それもどうなのかと思いました(^^;

私も可哀想なのは見られない方で
特にBLのようなファンタジーでは勘弁と思います;

園芸が趣味だなんて素敵ですね♪
またぜひ遊びに行かせて下さいvv
2011/10/23(日) 20:14:54 | URL | あけぼの #-[ 編集]
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ゲイ&ニューハーフのディレクトリ形サーチエンジンサイト!

GAY&NEWHALF Search Engine Site!

http://gay-half.net/
2011/11/02(水) 01:09:23 | URL | ゲイ #nGxJyawM[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/11/20(日) 17:26:27 | | #[ 編集]
秘密のコメ様へ
学生時代の友達とは余り会えなくなりますよね;
そのためにSNSがあるんだから始めればいいのかもですが...。

そう言えば、ゲイ映画には若い子が主人公のお話が多いかもです。
でも長くお付き合いしてるカップルさんのお話も見たいですよねv
2011/12/11(日) 11:06:37 | URL | あけぼの #-[ 編集]
このブログの題名を見て、元カノが腐女子だったことを思い出しました...(笑)
いやあこの映画面白そう。叙情漂いますね...
なんか同性愛だから描けるという美しさもあって、ストーリーもいいし、それと相まっているペルーの海岸も最高。いいですねー!
こういう見たあとに何かが残るような映画って好きです。日本語化dvd発売を願います;;
それではまた。
2014/03/28(金) 09:54:05 | URL | デコ広 #-[ 編集]
デコ広さん、こんばんは
今となってはこのブログタイトルはないと思います(笑)
でも分かりやすいっちゃわかりやすいですよねww
元カノさんが腐女子さんということはカムアウトされてたんですか・・・
彼氏さんにカムアウト済みなんてこそこそ隠れている私には眩しい限りです(^ω^ ;)

ほんとこの映画は情景描写もストーリーもとても良かったです。
まさしく見たあとからじわじわくる映画でした。
日本ではゲイ映画というだけでなかなか見られないようで残念です;;
2014/04/20(日) 18:43:18 | URL | あけぼの #-[ 編集]
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