アメリカの大手ゲイブログAfterEltonで選ばれた「最高のゲイ映画50」を1位から順にレビューしていく企画
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

マイ・フェア・レディ
1964年のアカデミー賞12部門にノミネートされ、8部門を受賞した、オードリー・ヘプバーン主演の余りにも有名なミュージカル映画

“May Fair Lady”『マイ・フェア・レディ』
182my-fair-lady-poster

初めて見たのは子供の頃でしたけど、オードリー・ヘプバーンの美しさ、華麗な衣装に楽しい歌や踊りにうっとりして、最初から最後までワクワクしながら見た覚えがあります♪

ただ、子供心にもかなり納得しかねたのは、あの何ともビミョーなラストシーンでした;

それで一緒に映画を観ていた母に、

「イライザはヒギンズ教授とケッコンするの?」

と聞いたところ、母もビミョーな表情で一言、

「あれは、そういう映画じゃないの。」

と答えたのを覚えています。

あれから月日は流れ、改めてこの映画を観た私ですが、確かにこれは「そういう映画」じゃないな、と母の言葉に頷くことができました^^

そんなわけで(?)、今回は久し振りに「名作をカムアウトさせよう♪」シリーズパート3。

この映画を観て、

「貧しい花売りの娘イライザがヒギンズ教授と結ばれるラブストーリー」

と、すんなり納得された方はお読みにならない方が無難です;





あらすじは皆様ご存知とは思いますが、一応書きますと…。

貧しい花売りの娘イライザは、ある夜、その酷い下層階級の訛りを、偶然通りかかった音声学者のヒギンズ教授に馬鹿にされると一念発起し、「きちんとした花屋」で働くために、彼のレッスンを受けたいと申し出ます。貧乏な娘をレディに仕立て上げるというアイディアが気に入ったヒギンズの友人、ピッカリング大佐が授業料を払うことになり、厳しいレッスンを経たイライザはイギリス英語の完璧な発声法をマスター、レディとして社交界にデビューするのでした…。

と、ここまでは楽しい曲に合わせて、教授のハチャメチャな特訓に笑ったり、やたら美味しそうなお菓子に食欲を刺激されたり(笑)、だんだん綺麗に飾り立てられるイライザにうっとり見惚れたりしながら、お話はドンドン盛り上がっていきます。

とにかく目立つ、アスコット競馬場でのど派手な衣装は最高だし、
182my-fair-lady

画像だと分かりづらいけれど、細部にまで拘った、エレガントな舞踏会用のドレスにもうっとり♪
182my-fair-lady2

でも映画は後半、ちょっとお子様には分かりにくい展開になっていきます;

舞踏会でイライザはレディとして注目を集め、ヒギンズとピッカリングの計画は大成功しますが、喜ぶ二人にイライザは腹を立て、ヒギンズ教授にスリッパを投げつけます。

このシーンの台詞は確かに、ヒギンズに恋するイライザが、いつまでも自分を恋愛の対象としてみてくれないヒギンズに怒っている、と解釈できなくはないし、その後、イライザが自分を好きだと言う若者、フレディのプロポーズを断るのも、やっぱりヒギンズが好きだからだ、と取れなくもないです。

イライザがヒギンズの母親の家に行ったのも、そこで彼を待つため。彼と話した後、最後に彼の家に戻ったことで、「照れ屋な」ヒギンズ教授の非常に分かりづらい「愛の告白」を受け入れたんだ、と一応は辻褄も合う。

でも子供心にも、それで納得するにはあれは余りにも変てこなラストシーンでした;

椅子に座って寂しそうに一人、録音された彼女の声を聞いているヒギンズに、彼の家に戻ってきたイライザが話しかけます。

“I washed my face and hands before I come, I did.”
「ここに来る前にちゃんと顔も手も洗ったんだよ。」

ヒギンズが聞いていたのは、初めて彼女が家に来た時の会話を録音したもので、その時、彼女の話し方のあまりの「汚さ」に却って興奮する彼に、「汚くなんか無いよ。」とメチャクチャな発音で言い返したのが、その台詞だったのでした。

録音機を止めて、ピンクでふわふわの綺麗なドレス姿のイライザは、そんな昔のままの台詞を口にします。

それに対して、ヒギンズ教授は帽子を顔にのせて表情を隠すと、

“Where the devil are my slippers?”
「私のスリッパはどこだ?」

と答え、そんな彼にイライザは、優しい表情でゆっくりと歩み寄るのでした。
182my-fair-lady3

二人の間の距離感が、実にビミョーなエンディング(笑)


この映画の原作は、アイルランド出身の劇作家、ジョージ・バーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』。

原作のラストでは、イライザはフレディと結婚してヒギンズ教授と別れる、ということがほのめかされていますが、ショーは1938年の映画化で脚本を手がけると、原作のラストを上記のように書き換えています。(ヘプバーン主演の映画は、この1938年作品のリメイク。)

そのショーは、この作品がロンドンの劇場で1914年に上演された際、劇場主が勝手にイライザとヒギンズ教授をくっつけたのに腹を立てると、1916年に出版された自作の改訂版にはわざわざ後書きをつけて、イライザとヒギンズが結婚するということは絶対にない、と長々と説明しています。

「イライザは若くて好きな相手を選べる。本能に従うなら(guided by her instinct)、独身主義者のヒギンズと結婚するはずがない。」

「ヒギンズは完璧な母親を理想としており、下種な人種には不自然(unnatural)と言われようと、そもそも女性に対するパッションのありようが、単に性的なものとは違うのである。」

そしてその後は後日談として、色々苦労しながらも、イライザがピッカリングの助けを借りて、フレディと花屋のお店を持つまでのストーリーが付け加えられていますが、イライザは自分の家族とお店を持ってもなお、ヒギンズ邸の家事全般を仕切っています。

“And it is notable that though she never nags her husband, and frankly loves the Colonel as if she were his favorite daughter, she has never got out of the habit of nagging Higgins”
「イライザは亭主に小言を言うことはなく、ピッカリング大佐にはまるでお気に入りの娘であるかのように愛情を示すけれど、ヒギンズに対してだけ文句を言い続けるのは、初めて会って以来の習慣になっている。」

“she likes Freddy and she likes the Colonel; and she does not like Higgins and Mr. Doolittle. Galatea never does quite like Pygmalion: his relation to her is too godlike to be altogether agreeable.”
「イライザはフレディと大佐は好きだが、ヒギンズと自分の父親が好きではない。ガラテアは決してピグマリオンを手放しで好きになれないのであり、完全に受け入れるには、彼は彼女にとって創造主のようでありすぎるのだ。」


ここまでヒギンズとイライザのロマンスを否定したショーが書いた以上、やっぱりあのラストは「恋の成就」と見るにはムリがあるし、その前にヒギンズ教授がイライザに掛ける言葉も、恋の告白としてはかなり不自然です。

“Eliza, you're magnificent. Five minutes ago, you were a millstone around my neck, and now you're a tower of strength, a consort battleship. I like you this way.”
「イライザ、君は素晴らしい。ほんの少し前まで、君は私の首につけられた重石だったのに、今や君は力強く聳え立ち、戦艦のように動じない。君はこの方が好い。」(←訳が変;

このお話は、当時のイギリス社会の厳しい階級制度に対する痛烈な風刺であると同時に、女性の自立を扱った物語であると言われていますが、このヒギンズ教授の台詞も、これから自立した女として生きていこうとしているイライザへの、はなむけの言葉のように聞こえます。

そしてさらに深読みすれば…。

ヒギンズ教授とピッカリング大佐はお互いのことを、“confirmed bachelor”「完全な独身主義者」と呼び合いますが、これは同性愛が犯罪だった当時のイギリスにおいて、唯一、ゲイ男性に許された生き方だったと思われます。

表立ってカムアウトは出来ないけれど、「女嫌いの変わり者」であれば、社会的に容認された。

つまり“confirmed bachelor”=「クローゼット」

アメリカ軍のDADTと同じ、「黙って隠れていれば見逃して上げる」的な状況かと…。

そしてそう思ってみるとこの映画、最初から最後まで実にスッキリ観られます^^

「一体どうして、女っていうのはもっと男みたいになれないんだ?」と嘆くヒギンズ教授も、イライザに着せるドレスのリボンの大きさを楽しそうに議論するヒギンズとピッカリングも、「いつまでも人形遊びをして…」と叱るヒギンズの母親のことも、頷きつつ見れてしまうのですw

映画の中で、やっと綺麗な発声法を身につけたイライザが、「一晩中でも踊っていたい♪」と歌うシーンがあるんですけど、これも、ヒギンズ教授への恋に舞い上がっているシーンというより、これで自分は誰にも引け目を感じずにすむ、という自立の喜びを歌うシーンだと解釈できますよね?
182my-fair-lady4

ショーによる後日談では、そうして自立した彼女は二人にとって、やがては近所に嫁にいった娘のような存在になるのではないかと…w

すると映画のあのラストも、頑固な父親に歩み寄るために戻ってきた娘の、優しい愛情に満ちたシーンに思えるのです♪


ショー自身は結婚していますが、その結婚が形だけのものであったということは知られていたそうです。

彼の知人の中には、オスカー・ワイルドの「親しい友人」だったアルフレッド・ダグラス卿や、T.E.ロレンス(アラビアのロレンス)もいて、多分ご本人もゲイだったのでは…というのは作品とは関係ない、って言われそうですけど、でもそう考えると後書きの回りくどい言い方も腑に落ちるんですよね。

「ヒギンズはゲイなんだから、イライザと結婚なんかするわけねーんだよっ!!」

って、ほんとはバシッと言いたかったのに言えなかったのかなって…(^^

ついでに言えば、この映画を監督したジョージ・キューカー監督も、当時のハリウッドで半ば公然とゲイライフを満喫していた方で、彼の邸宅にはケーリー・グラントもよくお忍びで訪れていたとかw


そんなわけで『マイ・フェア・レディ』は、

「熟年ゲイカップルとその理解ある母親、そして最後に彼らの養女となる娘」

の物語♪

と思うのは私だけ…じゃないですよね?(汗)


『マイ・フェア・レディ』はケリー・マリガンの主演でリメイクが決まっていて、ヒギンズ教授役にはヒュー・グラントやコリン・ファースの名前が挙がっているようですが、いっそ二人でカップルさんを演じてくれたらいいのにな♪

「ゲイ映画」として売るのがイヤなら、『シャーロック・ホームズ』みたいにしてくれても宜しくてよ(笑)

あれはロバダニさんが、「自分はゲイ役だった。」って散々言い回って、しまいにガイ・リッチー監督を怒らせたらしいですけど、あのホームズとワトソンは、どう見ても長いお付き合いのカップルさんでしたvv

せっかくリメイクするなら、『マイ・フェア・レディ』もせめて同様にお願いしたいものです♪


最後はオードリーが大好きなので、単なる画像のコレクション

182my-fair-lady5
「スペインの雨」のシーンの衣装でメイク中。

182Audrey Hepburn Cecil Beaton
ラストシーンの衣装で、セシル・ビートンによる映画のスチール撮影中。

182Audrey Hepburn Julie Andrews
ブロードウェイの舞台ではイライザを演じたジュリー・アンドリュースは、映画では「客が呼べない」としてイライザ役を降ろされますが、『メリー・ポピンズ』の主演でその年のアカデミー賞を受賞しました。

182Audrey Hepburn Rex Harrison

撮影の合間に寛ぐ、レックス・ハリソンとオードリー…ほんっとに綺麗だよね♪(゚ー゚)(。_。)ウンウン

にほんブログ村 映画ブログ 外国映画(洋画)へbanner11
『もしこの記事が面白いと思って頂けたら、ランキングのボタン↑をプチプチお願い致します』
スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
この記事読んだあと母とマイフェアレディについて話したんですけど、大昔(私小学生のころ?)見たきりのこの映画、今思い返してみても、イライザと教授がくっつくとは考えてなかったです私も母も。
母さえ、「あれは父親と娘の話よ!」と言い切っておりました。
母は腐女子のフの字もない(たぶんそんな人種が存在することさえ考えたこともない)、ゲイとオカマの区別もつかない古いタイプの人間なので、まさか男ふーふとは思っていなかったでしょうが(笑)

しかしそうか~
大佐と教授はふーふだったのかvv

なんか久しぶりに見たくなってしまいました(^^
2011/06/13(月) 01:24:02 | URL | くろみみ #-[ 編集]
くろみみさん、こんばんは
お母様も父娘説で嬉しいです~。
やっぱりイライザと教授がくっつくようには見えませんよねー。
スリッパの話しかしてないしww
うちの母も腐女子じゃないことは確かですが(笑
あの時、「そういう話じゃない」の意味を追求しなかったのが残念ですw
(したかもしれないけど覚えていない…。)

大佐と教授がふーふと思って見るとかなりすっきりするんですv
わがままで頑固な教授と、のんびりタイプの大佐。。。
なかなか好いカップルさんだと思うんですよねvv
2011/06/14(火) 21:04:43 | URL | あけぼの #-[ 編集]
こんにちは―。
私も昔に見てあんまりよく覚えてないんですが、
たんに年の差離れたカップルになるのかと思ってました。笑
・・・んが、そういわれてみると、終わりかたは妙です。
レックスハリソン☓大佐の人?
うーむ萌え的にはどうなんだろー。-_-;

昔のハリウッド映画はシンプル明快なのかとおもいきや
実は原作者の裏の意図が組み込まれてたりするのですね。
昔の映画だから尚、そういう隠れた部分が興味深いというか。
やっぱ、名作は迷作なのですね。
2011/06/29(水) 14:16:49 | URL | jumpi #w7E8CPEA[ 編集]
jumpiさん、こんばんは
こんばんはー。
なんかあの終わり方に引っかかってまして
改めて見たら、あら不思議!
教授と大佐の方がカップルさんに見え…w
萌えはさすがにないですが(汗
でもヒュー・グラントとコリン・ファースならもしや?!

昔の映画ほど同性愛的要素は隠してあるので
勝手に深読みするのは楽しいかもです^^
すっかり名作を迷作にしてしまいましたが(汗)
読んでいただいた上にコメントありがとうございました!

(もんちゃむ記事面白かったです!画像を見比べてしまいましたw)
2011/06/30(木) 20:30:37 | URL | あけぼの #-[ 編集]
シンプルかつ深い
純粋に男女の話。
スリッパで終わるのは最後まで教授の照れを表していて、それをあうんの呼吸でくみとるイライザ、というシーンだと思います。
最近の抱き合ったりだのキスをしたりだのといった直接的な表現とは違った秀逸なハッピーエンドです。

女嫌いの教授が、屋敷を黙って出ていったイライザに、女は気まぐれで嫌だ。逆に男は簡単で分かりやすくて信用できる。と再び独身主義の理由をさんざん言ってますが、その直後、婦人に対してずっと紳士的な態度をとっていたにも関わらず、イライザは単なる実験対象で、目の色すらも意識していなかった大佐がイライザ捜索などという面倒はごめん、と口実を作って去ってしまうシーンがあります。
それを知った教授が、やられたー、男もやっぱり自分勝手で信用ならないというシーン。
ところどころに人間の裏表が描かれているのです。
形だけは礼儀正しくても人の心がない大佐に対して、口は悪くてもいつでも直球で裏表がない教授。

いままで女性が嫌いだったのは、女が論理的でなく、考えもせずに母親のコピーのようにただ人生を送るからで、男性のように誠実で論理的で自立すればいいのに。と言っていた教授は、あなたなしで生きていける、という捨て台詞のようなイライザの別れ際のセリフに、これで本当に訛りがぬけただけでなく、自立した意見をもった理想の女性が完成したと言っていますが、これは意地をはっているのではなく、教授の一貫した価値観です。
イライザが去った時、お母さんが「イライザ、ブラボー」と言ったのは、これで本当にイライザが教授の心をがっちりつかんだから。

ですから、ロマンチックなエンディングではなくとも、うわついた感情でなく、深く心が通じ合った素晴らしいカップルが誕生した瞬間が描かれていると思います。

また、前半に、教授が独身主義であることと同時に結婚に肯定的な大佐の態度も描かれていますよ。

2016/10/23(日) 07:21:08 | URL | いやいや #D.3D8ZuQ[ 編集]
いやいや様へ
お返事遅れて申し訳ありません。
もちろん時代背景を考えれば、男女の恋愛・結婚の話として成立する物語しか世に出せないのは間違いないところで、ご意見ごもっとも、一々ご指摘の通りだと思います。
ただ個人的には、時代を超えて愛される名作というのは一つの条件をクリアしていると思っていて、それは読み手によってさまざまな解釈が可能ということです。

純粋に男女の話。というのはそれはそれで一つの読み方としてもちろんありなわけですし、王道はきっとそうなのでしょうが、そうではない解釈が可能というのもこの作品のすばらしさだと思っています。
絶対的な身分制度のある社会で、下層階級の人間が、スピーチを矯正され、身なりを整え、それなりの振舞いを叩き込まれれば王族にさえ認められるのだという痛烈な皮肉。それをユーモアたっぷりに描いたこの作品が、身分制度に対する風刺以外の当時の社会への批判や当てこすり(同性愛は犯罪とかバカげてるといったような)を含んでいたとしても不思議はないのではと思いました。

では長い記事を読んでいただいた上、丁寧なコメントありがとうございましたm(__)m
2016/12/29(木) 11:34:54 | URL | あけぼの #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。