アメリカの大手ゲイブログAfterEltonで選ばれた「最高のゲイ映画50」を1位から順にレビューしていく企画
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エンジェルス・イン・アメリカ
アメリカのゲイ男性から、2008年に「最高のゲイ映画」39位、2009年には16位に選ばれたのは、2003年にアメリカの有料ケーブルTV局「HBO」で放送されたミニシリーズ

『エンジェルス・イン・アメリカ』
Angels_In_America_DVD_cover

2004年のゴールデングローブ賞とエミー賞で高い評価を受けた、トータルで6時間近い長さのTVドラマです。

もちろん映画ではないんですけど、HBOが60億(円)近い予算をつぎ込んで完成させたと言われるだけあって、このリストに載ってる他の映画と比べて遜色ない、というより下手な映画よりよほど出来が好いかも^^

とにかく長いので、こういう企画を始めなかったら多分見ることはなかったと思うんですけど(汗)、おかげで見られて良かったって思いましたv

日本でもDVDが手に入るはずなのでお勧めですvv

以下はネタバレ注意。

このドラマで凄かったのは、何と言ってもロイ・コーン役のアル・パチーノ。
Angels_In_America_1

ドラマの中では詳しく語られていない彼の経歴について少し書いてみますと…。

ロイ・コーンは1927年、ユダヤ系アメリカ人でリベラルな民主党員だった両親の一人息子として生まれています。

このドラマに亡霊として登場するエセル・ローゼンバーグ(メリル・ストリープ↓のメイクが完璧!)は、彼が検察官時代に旧ソビエトへのスパイ行為を「立証」し、死刑に追い込んだ、やはりユダヤ系アメリカ人の女性。
Angels_In_America_2

彼女は夫と共に青年共産主義者同盟(YCL)に所属していました。

今でこそアメリカで共産主義っていうと、「反アメリカ主義」とほぼ同義語ですけど、ローゼンバーグ夫妻の裁判が起こった1950年当時は、まだ若い世代にその理想主義的な理念を支持されていて、だからこそ、冷戦時代に突入したアメリカにとって、放っておくには危険過ぎる思想だったのだと思います。

まだ幼い子供が二人もいたのに、ローゼンバーグ夫人まで死刑にしたのは共産主義者への見せしめの意味が強く、当時、世界中から夫妻の処刑に対する非難が寄せられていました。

現在に至るまでエセル・ローゼンバーグ自身にスパイ行為があったとういう証拠はなく、ロイ・コーン自身も後に、「自分が強引に有罪にした」という発言をしています。

その後、ロイ・コーンはマッカーサーの「赤狩り」に協力してそのキャリアを確立しますが、その赤狩りでも、リベラルな思想を持つ多くのユダヤ系アメリカ人が犠牲になっています。ハリウッドテンとしてブラックリストに載せられた映画界の「危険人物」の半数が、ユダヤ系アメリカ人の脚本家でした。

つまりロイ・コーンは、自らの同胞を裏切ることからそのキャリアをスタートさせた男…。

このドラマはNYに住むロイ・コーンが晩年、弁護士の資格を剥奪される直前、医者にエイズを告知されるところからスタートします。

「自分は男と寝るけどゲイじゃない。」

というのは、一生クローゼットに隠れてゲイであることを認めなかった彼が、その医者に向かって言うセリフですけど、このシーンのアル・パチーノの演技には思わず唸らされました(↓5分目辺り)



“You know your problem Henry, is that you are hung up on words, on labels, that you believe they mean what they seem to mean. AIDS. Homosexual. Gay. Lesbian. You think these are names that tell you who someone sleeps with, they don't tell you that. No. Like all labels they tell you one thing, one thing only: where does an individual so identified fit in the food chain, in the pecking order. Not ideology or sexual taste, but something much simpler: clout. Not who I fuck or who fucks me, but who will pick up the phone when I call, who owes me favors. This is what a label refers to. Now to someone who does not understand this, homosexual is what I am because I have sex with men, but really this is wrong. Homosexuals are not men who sleep with other men. Homosexuals are men who, in 15 years of trying cannot pass a pissant anit-discrimination bill through City Council. Homosexuals are men who know nobody and who nobody knows. Who have zero clout. Does this sound like me Henry? No. I have clout. Lots. “

「ヘンリー、お前の間違いは言葉に拘り過ぎてるってことだ。ゲイだのホモだのレズだのっていうラベルが意味すると思ってることにな。そういうラベルが誰かの寝る相手を指すと思ったら大間違いだ。どんなラベルだって同じこと。たった一つのことを示すだけだ。そいつが食物連鎖でどの位置にいるか、誰に食われる立場かってことを。イデオロギーでも性的嗜好でもない、もっと単純なこと、そいつの力の程度を示すんだ。俺が誰を犯るか、俺が誰に犯られるかってことじゃない。俺が電話したら誰がその電話に出るか、俺に恩を返すべきなのは誰か、これこそラベルが示すことだ。それが分からない奴に取っちゃ俺は男と寝るからホモってことになる。でも違うんだ。ホモっていうのは、15年間掛けても差別撤廃条例一つ、市議会を通せない連中のことだ。あいつらには何のコネもありゃしないし、誰もあいつらのことなんて知っちゃいない。いいかヘンリー、そんなのが俺だと思うか?違う、俺には力がある。有り余るほどに。」

“I have sex with men; but, unlike nearly every other man of whom this is true, I bring the guy I'm screwing to the White House, and President Reagan smiles at us and shakes his hand.”

「俺は男と寝る。けどな、俺は俺とやってる男共をワシントンに連れて行けるし、そこじゃレーガン大統領が俺たちに笑いかけて握手してくれるのさ。」

“Roy Cohn is not a homosexual. Roy Cohn is a heterosexual man, Henry, who fucks around with guys. And what is my diagnosis, Henry? No. Henry, NO. AIDS is what homosexuals have. I have liver cancer.”

「ロイ・コーンはホモじゃない。ロイ・コーンはな、ヘンリー、男とやりまくるヘテロの男だ。さあ、俺の診断はなんだ?違う、ヘンリー、間違えるな。エイズはホモが罹る病気だ。俺は肝臓ガンだ。」

唖然とするようなこの屁理屈は、実際にロイ・コーンが言ったんじゃないかと思わせられるくらいリアリティがあります。ゲイであることを隠して権力を手に入れてきた人物の、捻じ曲がった心情を完璧に表していて怖い…というか、逆に笑うしかないかも…;

医者はそんな彼を化物を見るような目つきで見ると、「じゃあそのコネを利用して薬を手に入れるんだな。」って言い捨てます。

当時開発中だったHIVの新薬は一般の患者には殆ど手に入らない貴重なもので、1980年代には沢山のエイズ患者の方が何の治療も受けられないままに亡くなっていたのでした。

だけどロイ・コーンは医者の忠告通りその新薬を大量に手に入れ、独り占めするのです…。

ちなみに当時のNY市長はエドワード・コッチ。彼もゲイであることを隠し、80年代にエイズ患者を守るはずだった条例をことごとく潰した男でした…><

さらに話がズレますけど(汗)ついでに書くと、ロイ・コーンが生まれた3年後の1930年に、アメリカの歴史に名前を残すことになる別のゲイ男性が、NYでユダヤ系の両親の元に生まれています。

彼は後にサンフランシスコに移住し、アメリカで初めて市会議員という公職に選出されました。

彼の名前はもちろん、ハーヴェイ・ミルクv

比べるのも失礼ですけど、同世代に同じ人種的、宗教的、性的マイノリティとして生まれながら、こうも違う生き方が出来るものかと…。

Put things in perspective(視野を広げて比べてみる?)っていう言い方をしますけど、そう思うと、ミルクの偉大さが今更ながら理解できます。

( ̄^ ̄*)


で、話を戻しますと(汗)、ドラマの中でロイ・コーンとまず関わるのが、モルモン教徒の若い弁護士、ジョー。

なかなかのハンサムさん(↓左)で、ロイ・コーンに狙われてるんだけど興味なしw
Angels_In_America_3

精神的に不安定だけど可愛い奥さん(↑右)も居て、でも実は彼も自分がゲイってことを隠してるのでした…。

厳格なモルモン教徒として育てられた彼の、奥さんへの言い訳もとても興味深いので書いておきます。(上に貼ったつべ↑の冒頭の部分)

“Does it make any difference that I might be one thing deep within? No matter how wrong or ugly that thing is so long as I have fought with everything I have to kill it? What do you want from me? What do you want from me Harper, more than that? For God's sake, there's nothing left. I'm a shell. There's nothing left to kill. As long as my behavior is what I know it has to be, decent, correct that alone in the eyes of God.”

「僕が自分の奥深いところでそうだったとしても、それにどんな違いがある?どんなに間違った醜いものであったとしても、それを殺すために全力で戦ってきたとしたら?僕にどうしろっていうんだ?それ以上、僕にどうしろっていうのさ、ハーパー?何一つ残っちゃいないんだ。僕は空っぽだよ。もう押し殺すべきものも残っていない。僕が取るべき行動を取っている限り、それだけで神様から見れば真っ当で正しいってことなんだ。」

ゲイということを隠して結婚した彼は、夜な夜なセントラルパークに出没しては、公園で相手を探す男達を覗き見しています。

でも自分が実際に男と寝ない限り、その衝動を押し殺して「ちゃんとした」結婚生活を続ける限り、奥さんに文句を言われる筋合いはないというわけ…。

これもとてもリアルで、それだけに寒気のする自己正当化の屁理屈でした;

このジョーが、夜中のセントラルパークで偶然顔見知りの男と出会い、とうとうその男、ルイスと初めて関係を持ちます。



この4話の冒頭のシーン↑がこのドラマで唯一萌えがあると言えばあるんですけど、ここで萌えると後で痛い目に遭うことに…;

というのもジョーの相手の男、ルイスはカムアウトしてるユダヤ系のアメリカ人で、ユダヤ人としてもゲイとしても、ロイ・コーンを忌み嫌っているから…。出会った時はジョーがロイ・コーンと親しいことを知らないルイスですけど、後からそれを知って怒り狂い、逆にジョーに殴り倒されるのです。

それにジョー(↓左)には実はプライアー(↓右)という、愛する彼氏が居ます。ただプライアーはエイズ患者で、ジョーは彼が弱っていくのを見ていられず、現実逃避中なのでした。
Angels_In_America_4

このプライヤーとロイ・コーンは偶然同じ病院に入院するんですけど、そこの看護士がプライヤーとルイスの友人でゲイのベリーズ。
Angels_In_America_5

この映画で一番自分をしっかり持ってる真っ当なキャラで、ロイ・コーンを軽蔑しながらも、最後は「同じクイアとして」彼を許す強さを持っていて、新薬の効き目もなく死んでいくロイ・コーンのために、ルイスにユダヤ教の祈りを捧げるように頼みます。

Angels in Americaっていうタイトル通り、エマ・トンプソンの天使がしょっちゅう登場するんですけど(←途中からウザ;)、私的には彼が一番のエンジェルでしたv

でもユダヤ人ではあるけれど、ゲイを否定するユダヤ教の教えを学んでこなかったルイスは、その祈りの途中でヘブライ語の祈祷の文句を忘れます。するとそこにエセル・ローゼンバーグの亡霊が現れ、最後は彼女がルイスの口を借りて、ロイ・コーンに祈祷を捧げてやるのでした。

彼がそれに値する人物であったかどうかはともかく、このドラマでのロイ・コーンは、そうやって罪を許されて死んでいく…とても感動的なシーンです。


とまあ、ここまでこのドラマは緊張感溢れる演技に目が離せないんですけど、でもこの後の展開には少々首を傾げてしまいました(汗)

プライヤーはロイ・コーンが残した大量の新薬を使って無事生き延びます。

それはもちろん良いんだけど、ジョーのお母さん(メリル・ストリープの2役)と、ルイス、プライヤー、ベリーズの4人が和気藹々としながらセントラルパークで語り合うラストシーンには・・・?
Angels_In_America_6

厳格なモルモン教徒だった母親のせいで、息子のジョーが苦しい思いをし、無理に結婚生活を続けていたっていう設定だったはずなのに、そのお母さんはドラマの途中ですっかり理解ある良い人になって、3人のゲイキャラのお母さんみたいになっちゃうんです;

「その前にまず自分の息子を何とかしてあげたら?」

そう思ったのは私だけでしょうか?(汗)

ラストエピソード(6話)の長い長あぁい天国のシーンも、幻想的っていうより、何だかありきたりなイメージで安っぽかったし、全体として見る価値はあるけど、6話の途中から急に失速しちゃう感じなので、私的には100点はあげられなくて…80点くらいかな?^^;

そうそう、天使像のある噴水↓を始め、四季折々のセントラルパークが登場するのは、NYを訪れたことのある人には懐かしくてお勧めかもv
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例によって最後はトレイラーですv


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コメント
この記事へのコメント
どこにでもあり
それがクローゼットか、
砂漠か、森か、お堂かの違いぐらいで
どこでもどこかであることではありますよね。

そして、それぞれに思って、
進む道も違う。
寛容であるか、嫌悪するか。

宗教なんかも絡んで、
一番ややこしいけど、
一番ありたい姿かもしれませんね。

同性であっても異性であっても
”恋愛”って難しいと思う。
子供云々とか、宗教がとかの諸々抜いたら
おんなじことだとも思えます。

このドラマさっくり伺った限りでは、
(パッケージとか、ちょいちょい話は聞いてましたが)
同性としての愛をどこか”恥”と感じて隠した人たち
(当然といえば当然、そうもなるかと)なりの
ドラマなんだなと思いました。
簡単に言えば、
あるクローゼットの中で怯えてた人たち

ドラマなんだと。
そしてそれをまた「なんてことだ!この臆病者!!」とは
責めれないなとも思いました。

なかなかこの手の問題を
(問題というのは失礼かもしれませんが)
描ききるのは、難しいと思います。

所詮は空の上の天使ではなく、
人の間に天使がいるのか?じゃないでしょうか?

追伸
余談ですが、
羅川真里茂さんの「ニューヨークニューヨーク」が
なかなかよかったですが、
ちょっとドラマチックすぎるところは
まだまだなのかなと思いました。
わたしもちびちびと描こうとしてますが、
(稚拙ながら)
どうもドラマティックな山場を持ってこようとしてしまい、
苦戦してます(苦笑)


2010/04/08(木) 06:55:30 | URL | すずら #0eKlHyVs[ 編集]
すずらさん、こんばんは
>このドラマさっくり伺った限りでは
わわっ、それは私がさっくり書きすぎなだけですっ(汗)
ほんとは6時間たっぷりの濃い内容なので、ぜひぜひ機会があったらご覧になってみて下さいv
おっしゃる通り、人種、宗教、セクシュアリティ、政治、アメリカという国の色んな側面に切り込んだ、とっても見ごたえのあるドラマですvv
ゲイということを隠していたロイ・コーンのような人物も描かれていますけど、それぞれ異なる個性やバックグラウンド(人種だったり、宗教だったり)のカムアウトしてるゲイの人達も活き活き描かれていますv
特にゲイの看護士さん役の方が、アル・パチーノと火花を散らして一歩も引かず、ウジウジ優柔不断で理屈ばっかりのルイスにもビシッと言うことを言ってくれる、とても素敵な人なんです☆
>所詮は空の上の天使ではなく、人の間に天使がいるのか?
アメリカの看護士さんは青いユニフォームが多いんですけど、彼こそ「白衣の天使」って感じでしたv

本当にこういった複雑なお話を描き切るのは大変だったと思います。
でも脚本家の方がNY出身のユダヤ系のゲイ男性ということもあって、6時間という長さが気にならないくらい、お話のリアルさに引き込まれましたvv

>羅川真里茂さんの「ニューヨークニューヨーク」がなかなか
色んな方がお勧めされているのを聞いたことがありますので、いつか読んでみたいです!^▽^
2010/04/08(木) 19:37:59 | URL | あけぼの #-[ 編集]
素晴らしい解説です!
全く同じところで圧倒され、天使の登場の事とか、後半がダレ気味なことまで代弁してくれて<(_ _*)>アリガトォ!って感じですw それ以上にとっても博識でいらっしゃるので勉強になりました。少しずつ他も読ませていただきます♪
2010/12/21(火) 06:02:57 | URL | pengin-ice #HyHEZCCI[ 編集]
pengin-iceさん、はじめまして。
コメントありがとうございました☆
やっぱりあの天使はちょっと出しゃばりすぎですよね…;

博識なんてことは全然ないですっ(汗)
ただ好き勝手に色んなことを書いてるブログですが
もし宜しかったらまたぜひ遊びに来て下さい^^
2010/12/21(火) 22:28:23 | URL | あけぼの #-[ 編集]
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
2015/08/30(日) 02:30:04 | | #[ 編集]
ジュリアスさん、こんにちは
お返事が遅くなってすみません。
ブログを書く前に調べてみたのですが、奥様の方には死刑を求刑・執行するだけの証拠がなかったようです。
2016/01/24(日) 10:20:09 | URL | あけぼの #-[ 編集]
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